ニュースリリース

糖尿病専門医の櫻岡医師が解説「民間サービスを活用した糖尿病腎症重症化予防」

一般社団法人LifeMaintコンソ―シアムの理事でもある 
櫻岡 怜子(さくらおか りょうこ)医師

一般社団法人LifeMaintConsortium(一般社団法人ライフメンテコンソーシアム 以下、LMC)は、健康保険組合向けに「withコロナ時代の糖尿病重症化予防」セミナーを主催した。このセミナーは医療法人社団青十字会 日比谷国際クリニック・株式会社サンプリ・PwCコンサルティング合同会社共催で実施。糖尿病専門医の櫻岡 怜子医師(さくらおか りょうこ)に糖尿病腎症の重症化予防がなぜ大事なのか、糖尿病腎症の重症化予防方法について講演していただいた。LMC事務局はセミナーの中で重要だったポイントを、あらためて櫻岡医師にお伺いした。

人工透析の原因1位は糖尿病腎症

──本日は櫻岡医師に、糖尿病腎症重症予防とLMCの取り組みについて、お話を伺ってまいります。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

──まずは人工透析について教えていただけますか。

はい。人工透析は、腎臓の代わりに汚れた血液を外に取り出して、きれいな血液と入れ替えてくれる治療法です。私は、人工透析は糖尿病の合併症で最も恐ろしいと考えています。

──それはなぜでしょうか?

人工透析が、身体的にも経済的にも、大きな苦痛を伴うものだからです。

腎臓は、私たちの身体の中で、ろ過装置を担う臓器です。汚いものを尿として排出させ、きれいなものを身体に戻してくれる働きがあります。人工透析は、まさにその機能を利用した装置で、汚れた血液を外に取り出して、きれいな血液と入れ替えてくれる治療法です。しかし一般的な血液透析は、週3回病院に通う必要があり、1回4時間、合計週12時間ベッドに拘束されることになります。人工透析をやらないと排尿ができず、汚いものが体内に溜まってしまいます。人工透析は、死ぬまでずっと続けなければいけない命綱です。

そして人工透析導入後に5年生きられる確率は、わずか54%しかありません。

さらに人工透析は、家族にとっても負担が大きいものです。人工透析患者には、減塩・低カリウム・低リン血症・低タンパクといった細やかな食事管理が必要になってきます。食事を準備する家族も大変です。

──仕事をするのも、難しくなりますね。

人工透析時間は物理的に仕事ができません。ですから職場の環境整備や理解が不可欠です。仕事内容も大きく制限されます。今までのような仕事ができず、所得も下がります。通院費用や人工透析の費用を、家族が支えなければいけません。また、人工透析は身体の負担も大きく、家族の介助も必要です。

友人たちとの外食も難しくなりますし、人工透析は病院でする必要があるため、長期の旅行もできなくなってしまいます。

──おっしゃるとおり、恐ろしい合併症ですね。

人工透析が恐ろしいのは個人や家族だけではなく、国にも経済的負担がのしかかる点です。

人工透析の医療費は1人あたり1年間で約500万円といわれています。

年間人工透析費用500万円のうち、約450万円を国庫や健康保険組合が負担している

単純計算で月々約42万円かかりますよね。実はこの医療費のほとんどは患者が払うわけではないのです。人工透析には高額療養費制度が適応されるので、個人負担は毎月1~2万円で、残りは健康保険組合や国庫が負担しています。先ほど話したように人工透析は一生ずっと続けなければいけないので、財政がどんどん圧迫されるわけです。1人、新規の人工透析患者が増えてしまうだけで、健康保険組合によっては保険料率を上げなければいけない場合もあります。保険料率があがると月々の手取り額が減るので、健康な人にも影響があるのです。

現代の日本で、人工透析になる原因の第1位は、糖尿病腎症です。しっかり予防することで、人工透析にならずに、患者も、その家族も、健康保険組合も、国も、みんな幸せになれるはずなのです。

人工透析予防は糖尿病腎症3期がカギ

──人工透析を予防することは、可能なのでしょうか?

糖尿病腎症による人工透析を予防することは可能です。腎臓はすべての臓器の中で、最も毛細血管が多く、繊細な臓器といわれます。血糖値が上がれば上がるほど、血管は傷つき、もろくなり、薄くなっていきます。するとザルの網の目が広がるように、蛋白質が外に漏れ出します。尿蛋白は、身体に必要な栄養素なので、本来は身体の外に漏れ出てはいけないものです。これが、糖尿病腎症の始まりです。

尿蛋白の漏れている量に応じて、糖尿病腎症は5段階に分類されます。

糖尿病腎症の病期分類(セミナー発表資料より抜粋)

アルブミンという蛋白が流れ出た状態の尿を、「アルブミン尿」といいます。アルブミン尿がかなり顕著に流れ出ている状態は、第3期と呼ばれます。

この第3期をしっかり食い止めることが、人工透析の予防において大切です。3期以前であれば、腎臓の働きを正常に戻せるからです。糖尿病性腎症の3期で食い止められないと、人工透析に向かってどんどん進行してしまいます。

腎臓を守るための薬と減塩を組み合わせることにより、人工透析の導入時期を延ばし、健康寿命を延ばせるのです。

なぜ糖尿病腎症の患者は重症化してしまうのか

──先ほどのお話で、人工透析になる原因の第一位は糖尿病腎症だというのがありました。なぜ、糖尿病腎症患者から人工透析になってしまう患者が、増えているのでしょうか?

もちろん、糖尿病患者全体の数が増えているのもありますが、私は次の3つが原因であると考察しています。

糖尿病腎症が重症化する原因(セミナー発表資料より抜粋)

1つめについては、「医者なら何でも診てくれるだろう」と考えてしまう患者もいます。しかし、治療薬の選定、病態の説明、食事指導など、それぞれの分野のスペシャリストに身をゆだねることが大切です。

糖尿病専門ではない医者にかかり、適切な治療を受けられないことで、糖尿病腎症に気付かず、あっというまに人工透析になってしまうケースが増えています。

2つめですが、現在、法律で定められている健康診断では、尿蛋白の項目はありますが、アルブミン尿を調べる項目がありません。ですので、健康診断では糖尿病性腎症3期の方かどうかの気付きができないのです。また、健康保険組合では患者の治療状況まで把握することが困難なため、腎症の進行を把握できないのが現状です。

3つめの問題ですが、医療機関、特に市中病院・大学病院は患者数が多く、一人ひとりの患者に目を配るには限界があります。糖尿病は生活習慣病なので、生活のフォローはかかせません。しかし、適切な提案をしたりヒアリングをする時間がたりず、本来やるべき治療が手遅れになってしまったり、見逃されてしまったりするケースも考えられます。

糖尿病腎症の重症化は3ステップの介入で回避できる

──なるほど。人工透析が増えているという現状を、回避する方法はあるのでしょうか?

はい。私は3ステップの介入方法で回避できると考えています。

糖尿病腎症の重症化予防の3ステップ(セミナー発表資料より抜粋)

人工透析になる可能性が高い患者を見つけたら、その患者に対し検査や外来をすすめます。そして糖尿病性腎症3期であることが判明したら、オーダーメイド治療を通して、さまざまな重症化の要因に対してアプローチしていきます。この3ステップにより、腎機能低下の進行を緩やかにできると考えております。

──人工透析になる可能性が高い患者を、どのように見つければよいでしょうか?

複数年の健康診断結果や、健康保険組合のレセプトデータを活用し、腎機能の低下傾向を分析することで見つけ出します。糖尿病腎症でも、前期(1〜2期)と後期(3期以降)では、数値が大きく変わります。糖尿病腎症3期になると一気に腎機能が低下します。そのため、複数年のデータがあった方が、人工透析になる可能性を予測しやすいのです。

このデータをもとに、外来での検査や自宅や会社でできる郵送検査を利用して、「本当に糖尿病による腎症なのか?」かつ「糖尿病性腎症3期なのか?」を確認していきます。

その結果によって、患者個人にあわせたオーダーメイド医療を提供します。

──オーダーメイド医療では、具体的にどのようなことをするのでしょうか?

オーダーメイド治療では、腎症を重症化させる様々な要因へ介入します。投薬治療はもちろんですが、食事指導や食事提供、正しいリテラシー付与などを行います。そして患者のライフスタイルにあわせたソリューションを提供することに注力します。

オーダーメイド治療(セミナー発表資料より抜粋)

たとえば、減塩・低たんぱく・低カリウム・低リン血症の治療や食事指導を行います。

しかしビジネスマンの方は宴会や接待も多く、自炊の時間を取るのも難しい方が多いです。患者のライフスタイルに応じて、市販の食事を組み合わせて提供、治療にあたっています。

また、CGM(Continuous Glucose Monitoring:持続性血糖測定器)を付けて、「血糖値の見える化」を行います。これは腕にプラスチックの針を刺して、リーダーをかざすことで、タイムリーに血糖値を測定できるものです。

──そんな便利なものがあるのですね?

血糖値が上がる食べ物は人によって違います。そのため、患者それぞれが「自分の血糖値を上げる食べ物は何か」を知る必要があります。そこで実際に患者にCGMを付けて、「これを食べると血糖値が上がるのだな」「これは血糖値が下がる食べ物なのだな」というのがわかります。ここに楽しみを感じる患者はとても多いです。驚きと発見が、患者が持つ病識の上昇につながっていくのです。 ほかにも、減塩のため「味蕾回復プログラム」も行います。これは、異なる量の塩分が付いたろ紙を順に自分の舌につけていって、塩分何グラムで塩気を感じるのかチェックします。糖尿病腎症重症化予防には塩分制限が重要なのですが、長年塩分過多な食生活を送っていると、塩分に対する感度が鈍くなってしまっていることが多いです。まずは自分の舌がどれくらい鈍っているのか患者に認識してもらい、塩分過多を実感してもらいます。また、味を感じる器官である舌の味蕾(みらい)は生まれ変われるので、減塩食を1日の食事に取り入れて鈍った舌の感覚を戻します。減塩食はまずいという患者が多いですが、舌の感覚を取り戻すと、前の食事が塩辛く感じるとか、ドレッシングかけすぎだったと気づいてくれます。

糖尿病腎症の重症化予防には、健保・医療・民間が連携することが重要

──オーダーメイド治療は素晴らしいですね。実現にあたり、必要なものは何でしょうか?

大切なのは、糖尿病腎症3期を発見することです。そして発見するには、健康保険組合の協力が必要不可欠です。糖尿病腎症3期の発見があり、民間サービスの協力があって初めてオーダーメイド治療は成立します。

糖尿病腎症の重症化予防には、健康保険組合・医療機関・民間サービスの連携が不可欠
(セミナー発表資料より抜粋)

私は糖尿病腎症から人工透析になりかけている方々を、一人でも多く救いたいと考えています。今こそ健康保険組合、医療機関、そして民間サービスが三位一体となるべきです。この思いからアウトカムのでる糖尿病腎症重症化予防を実現すべく、三者が連携できるプラットフォームとして立ち上げたのが一般社団法人LifeMaintConsortium(LMC)です。LMCはオーダーメイド治療チームを実現するため、多くの民間企業とも連携しています。LMCの取り組みを広げるために、さまざまな公益人にもご協力をいただいています。LMCに賛同していただける健康保険組合や民間企業にはぜひ参画いただき、糖尿病腎症重症化予防を一緒に取り組んでいきたいと考えています。

──最後にLMCはどのような団体でありたいとお考えでしょうか?

人工透析患者にとって、治療から日常生活までを一貫してサポートする団体を目指しています。また人工透析の導入者を減らし、医療費の適正化された社会を目指すことで、社会に貢献できる団体でもありたいと考えています。

──本日は、貴重なお話をありがとうございました 。

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